場面緘黙症Journalブログ

場面緘黙(かんもく)症。選択性緘黙。学校など特定の場面で声が出ません。

十代以上の緘黙への支援法、洋書で扱われ始める

2017年02月08日(水)


場面緘黙症の支援法を示した本は、低年齢の緘黙を想定したものが多いです。十代以上の緘黙については、言及があってもわずかだったりします。[注]

ところが、英語圏ではこの状況に変化の兆しが見えます。

十代向けの認知行動療法が80ページ


2016年12月に出たばかりの The Selective Mutism Treatment Guide 第2版では、十代や年齢が上の子を対象とした、認知行動療法の章が新設されました。そのページ数は80ページに及び、全256ページのうち、およそ3分の1を占めます。

この本の初版は北米などでそこそこ好評だったようです。著者の Ruth Perednik 氏は、緘黙治療を20年以上にわたって専門にしてきたイスラエル在住の心理学者です。

[追記(2017年2月9日)]

著者に関して誤った記述があったため、修正しました。


なお、私は第2版を今のところ「積読」にしている状態で、まだ流し読みしかしていません。精読し終えたら、読んだ感想のようなものをこのブログで書くかもしれません。



英国で緘黙治療のバイブルと呼ばれた本の第2版


それから、2016年10月にこれまた第2版が出たイギリスの本 The Selective Mutism Resource Manual にも、思春期や青年期、成人期の緘黙者への支援についての内容が新たに盛り込まれました。先ほどのイスラエルの本のような80ページほどの分量はありませんが、従来の本に比べると踏み込んでいます。

以前お話しましたが、私はこの本を読んでいる最中です(読むの遅い……)。この本は、質量ともにかなりの内容です。初版は、イギリスでは緘黙治療のバイブルとも呼ばれていたそうですが、第2版もそのような扱いを受けても不思議ではありません。著者の Maggie Johson 氏と Alison Wintgens 氏は言語聴覚士で、イギリスの緘黙支援では有名な方のようです。

The Selective Mutism Resource Manual
Maggie Johnson Alison Wintgens
Speechmark Publishing Ltd


英米では影響がありそう


どちらの本も初版が好評を得ており、第2版の内容も、英米では影響がありそうです。

十代以上の緘黙への支援は、これまで比較的語られてこなかった分野です。読んだ内容を、何らかのかたちでこのサイトで生かすことができればと思います。





緘黙児が口頭で答えやすい質問(症状が軽い場合)

2017年02月01日(水)


選択型の質問


「あなたはうどん派?そば派?」

この二択の質問方法、場面緘黙症の人(主に子ども)に対する質問の仕方として、英語圏で最近よく見ると感じています(例えば、Johson and Wintgens, 2016; Kotrba, 2015; Mac, 2015; Kurtz Psychology Consulting PC, n.d.)。

これは、緘黙児が発話というかたちで答えやすい質問とされます。質問内容は「あなたは右利きですか?それとも左利きですか?」でもいいですし、何でもよいです。

北米では、親子相互交流療法(PCIT)という心理療法を緘黙児に適用する動きが広がっているのですが、その技法の一部としてこの質問方法が紹介されることが多いです。北米では、この質問方法は forced choice question(s) と呼ばれています。

一方、イギリスのマニュアル The Selective Mutism Resource Manual(第2版)では、親子相互交流療法とはまた違った緘黙児への治療方法が体系的に示されているのですが、その中でも、この質問方法が紹介されています。このイギリスの本では、X or Y question(s) という呼び方です。

治療場面でのみ使われる質問方法というわけでもないようです。例えば、後にご紹介する親向けの動画でも、この方法が取り上げられています。


併せて、次のことに注意する


この質問方法に対する注意事項として、よく次のようなことが挙げられます。本などによって多少書いてあることが違うのですが、大体共通しています。

緘黙児が答えるまで5秒待つ


緘黙児が答えるまで、少なくとも5秒は待つこととされます。それでも答えなければ、問いを繰り返します。


緘黙児の代わりに他の人に答えさせない、緘黙児の心を読み取らない


緘黙児本人に答えさせます。


「はい/いいえ」型の質問は避ける


はい/いいえ型の質問(英語だと Yes/No question(s))は、緘黙児がうなづいたり(はい)首を横に振ったり(いいえ)して答えるかもしれません。こうなると発話につながらないため、避けるべきとされることがあります。

例えば、「君は右利き?」と聞くと、はい/いいえ型の質問になってしまいます。ですから、そうではなくて、「君は右利き?それとも左利き?」と聞くわけです。

Charli’s Choices新しいウィンドウで開く)というアメリカの緘黙の絵本では、絵を描くために好きなマーカーの色を、緘黙児に二択で選ばせる場面があります。赤のマーカーと青のマーカーを手にとって「赤?青?」と聞くわけですが、その緘黙児は声を出さずに、どちらのマーカーかを「指差し」で答えました。それに対して、声に出して答えるよう緘黙児に聞き返す場面が描かれています。


緘黙児が答えたら答えを繰り返して言う、褒める


例えば、緘黙児に「○○ちゃんは、うどん派?そば派?」と聞いて「うどん派」と答えたとき、「そうか、うどん派かあ」というように、答えを繰り返すとよいとされることがあります。

また、褒めるとよいともされます。単に「ありがとう」と褒めるのではなく、「教えてくれてありがとう」というように、褒める点を具体的に指摘することが推奨されることもあります(これを labeled praise と呼びます)。ただし、大勢の人の前で褒めたり、大仰に褒めたりするのは不適切とされます。

これらは、緘黙児の発話行動を強化する効果があると考えられているようです。


発展:オープンエンド型の質問


こうして緘黙児が質問に答えられるようになると、オープンエンド型の質問に切り替えてゆきます。例えば、「好きな食べ物は何?」とか「香川県はうどん県を名乗ってるけど、どう思う?」など、答えが予め選択肢というかたちで用意されていないものです。これは緘黙児にとって、難易度が高くなります。


悪循環を断ち切るために


以上のお話の背景には、次のような悪循環があるという仮説があります。

話しかけられる

黙る

不安が減る

最初に戻る

これでは、緘黙行動が強化されてしまいます。これを negative reinforcement(負の強化)と呼びます。以前、緘黙児は何回答える機会を逸している? (新しいウィンドウで開く)という記事の中でお話しましたが、緘黙児はこうしたことを何度も繰り返しています。

この悪循環を断ち切るために、上のような緘黙児にとって答えやすい質問方法で、発話を促そうということです。


素朴な疑問:「発話を強制してはならない」「非言語コミュニケーションを大事に」と矛盾するかどうか


ここまでお読みになって、疑問に感じた方がいらっしゃるかもしれません。緘黙児に発話を強制しては逆効果ではないかとか、緘黙児にはうなずきや指差しなど非言語コミュニケーションを大切にするべきではないかということです。

これは専門家ではない私なりの解釈なのですが、これまでお話してきたことは、緘黙症状が重くない場合を前提としているのではないかと思います。親子相互交流療法(PCIT)の緘黙への適用にしても、イギリスのマニュアルにしても、非言語コミュニケーションを認めることなどを、その前の段階として行なっています(ここのところが十分説明されないことがあるので分かりにくいのですが)。

緘黙症状が比較的重い場合は、まず非言語コミュニケーションから始める。そして、それができるようになれば、今回お話したような緘黙児にとって答えやすい質問方法を盛り込むなどして、発話行動をとらせていく。そういうことだろうと思います。

※ もちろん、今回お話しした質問方法も、強引なやり方でしてはいけません!


動画


カナダの動画


英語動画ですが、以上のことがうまくまとまったものがあるのでご紹介します。カナダの AnxietyBC という NPO が一般向けに作ったものです。特に、親向けの内容と思われます。この動画では、緘黙児に選択型の質問をする前に、ウォーミングアップを挟んでいます。

↓ YouTube へのリンクです。2分55秒あたりからご覧になるとよいと思います。今回お話した選択型の質問は、5分36秒あたりから登場。
◇ Understanding and Managing Selective Mutism (新しいウィンドウで開く


おまけ・緘黙RPGより二択質問の動画


あと、おまけですが、現在更新作業中の「緘黙RPG」ダウンロード版ver1.11より、緘黙児に二択の質問をする場面の動画です。

↓ mp4ファイル。4.48MB。23秒。
◇ 緘黙児の栞に二択質問 (新しいウィンドウで開く

これまでのver1.10以前では、「栞ちゃんが好きな動物教えて!いぬ?ねこ?それ以外?」という質問でした。「それ以外」を加えて、少しアレンジしていたのでした。プリシー版では既にこの箇所の更新を済ませています。

なお、このイベントは見つけにくいです。緘黙RPG をクリアされた方でも、これは見たことがないという方がほとんどではないかと思います。



新しい本『学校における場面緘黙への対応』が出ます

2017年01月25日(水)


専門家による新しい場面緘黙症の本が刊行されることが明らかになりました。Amazon.co.jp に書籍情報があります。

↓ 予約注文できます。Amazon.co.jp アソシエイトリンクです。
◇ 高木潤野『学校における場面緘黙への対応-合理的配慮から支援計画作成まで』学苑社 (新しいウィンドウで開く

発売予定日ですが、Amazon.co.jp には2017年3月1日とあります。

著者の高木潤野氏は、長野大学准教授です。緘黙に関しては、信州かんもく相談室代表、日本緘黙研究会事務局長を務めています。緘黙の講演などでよく講師をされているので、この先生のお話を聞いたことがあるという方もいらっしゃるだろうと思います。高木氏は数多くの緘黙事例に関わってきたほか、緘黙に関する研究発表も行っています。

学苑社は、特別支援教育、社会福祉、心理などの本を出版している会社です。緘黙関係の本も多数出版してきました。『場面緘黙Q&A』『なっちゃんの声』『どうして声が出ないの?マンガでわかる場面緘黙』『先生とできる場面緘黙の子どもの支援』『親子でできる引っ込み思案な子どもの支援』は、学苑社によるものです。

近年、緘黙を主題とした和書が毎年のように出版されてきました。ですが、それらは、経験者や保護者が主要な著者だったり、海外の専門家が書いた本の翻訳書だったりしたものが中心でした。日本の専門家のみの手による本は、1994年に出版された『場面緘黙児の心理と指導』以来、20年以上にわたって出ていませんでした。しかも、『心理と指導』は実質1989年に書かれたもので(著者死去のため出版が遅れた)、30年近く前の本とも言えます。今回は、その『心理と指導』以来の、専門家の和書となります。

なお、今年中には、モリナガアメさんの緘黙実録漫画も書籍化される予定だそうです。こちらの出版社は、『私はかんもくガール』の合同出版です。






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2015年12月3日再設置。

近々の予定

◇ ラジオ番組「若倉純 かんもくの歌声」第3回

日時:2月26日(日)23:00~23:15
ゲスト:manana さん
⇒ FM世田谷ホームページなどで聴けます

『校庭東風』上映情報

長野県、千葉県での上映決定。広島県ではイオンシネマでの上映決定。詳細は公式ページへ。 ※ 『校庭に東風吹いて』は、場面緘黙症の架空の少女が登場する映画です。

最近の記事

リンク

■ ココロのひろば
「場面緘黙」とネットで検索してもほとんど何もヒットしなかった頃に開設されたサイトです。長く更新停止しています。

■ 「話すことがむずかしいあなたへ」
自分を変えたい、話せるようになりたい--こうした緘黙の当事者向けに、そのための具体的な方法を示したマンガです。はやしみこさん作。

■ 場面緘黙症 - メンタルヘルスブログ村
多数の緘黙のブログが登録されています。

■ 緘黙の話
昔緘黙児だった主婦の方が、高校で克服するまでの想い出を綴られています。

■ 場面緘黙について考える-備忘録-
英国在住の元緘黙児の母親によるブログです。緘黙だった息子さんのこと、英国の支援、日々の暮らしの中での想いなどが綴られています。

■ 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
不安に関する心理学、脳科学的知見から緘黙症を考えています。

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