ケイティーさんの事件、加害者に深刻なメンタルヘルス上の問題

2017年07月06日(木曜日)

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イギリスで1月9日、場面緘黙症がある7歳の少女ケイティー・ラフ(Katie Rough)さんが殺害された事件のお話を、これまで何度かしてきました。

お伝えした通り、事件はイギリスで大きく報じられました。議会では、メイ首相とコービン労働党党首が、哀悼の意を表す場面がありました。ケイティーさんの遺族は、新刊『場面緘黙支援の最前線』でもお馴染みの緘黙支援団体 SMIRA の会員でした。

この事件で7月3日、新しい展開がありました。現地のメディアが次々に報じています。中には、ケイティーさんが緘黙だったことに触れているメディアもあります。そこで、この件についてお話したいと思います。

被告人が認めた罪と動機


7月3日は裁判の初日だったのですが、ここで被告人の16歳少女(事件当時15歳)が罪を認めたそうです。それまでは否認していました。認めた罪は、限定責任能力による manslaughter という殺意のない殺人です。

殺害の動機については、ケイティーさんがロボットかどうか試してみたかったからとのことでした。これは妄想(delusional thoughts)です。実はこの少女、事件以前から深刻なメンタルヘルス上の問題があったそうです。ケイティーさんに限らず、人間をロボットだと確信しているとのこと。他にも、メンタルヘルス上の問題や殺害との関連が疑われる少女の言動が、メディアで報じられています。

少女の正確な診断については、専門家の間では見解の一致を見なかったそうです。ある専門家の見解として、考えられる障害の名称が複数のメディアで挙がっていますが、ここでその名を挙げるのは控えます。

※ 深刻なメンタルヘルスの問題を抱える方が皆、このようなことをするわけでは、もちろんありません。極めて例外的だろうと思います。


まさか加害者に、深刻なメンタルヘルス上の問題があったとは……


私は、なぜ緘黙の当事者がこのような事件に巻き込まれなければならなかったのか、緘黙が命を落としたことと関係があるのかどうかが気になり、事件のニュースを追ってきました。ですが、まさか加害者に、深刻なメンタルヘルス上の問題があったとは……。報道されている内容が事実だとしたら、私にとってはショックです。

今回の報道で犯行の動機が明らかになったものの、なぜケイティーさんが狙われたのかまでは分かりません。ケイティーさんを狙う理由があったのか、それとも、ケイティーさんはたまたま被害に遭ったのか。このあたりのところは未解明なのでしょうか。

The TimesThe Guardian の記事にもありますが、加害者の少女に深刻なメンタルヘルス上の問題があったとなると、この少女が適切なアセスメントと治療を受けていたかどうかが問題になりそうです。もしそうでなかったとしたら、今回の事件は本来防げたはずのものが防げなかった可能性が出てきます。もちろん、必要なケアが受けられなかったのなら、少女本人にとっても不幸なことです。この少女は、もしかしたら被害者でもあったのかもしれません。

適切なアセスメントや治療を受けずに置かれたということであれば、これは緘黙にもよくありそうなことです(緘黙そのものは、今回の少女のような妄想にはつながりませんが)。また、緘黙がある人の中には、何らかのメンタルヘルス上の問題を併せ持っている人もいます。それだけに、今回の事件は何とも重苦しく感じます。





米国の最前線「集中プログラム」10~14歳向けも登場

2017年07月03日(月曜日)

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アメリカでは、緘黙児への集中プログラムが盛ん


場面緘黙支援の最前線』は、イギリスの本です。アメリカの最前線は、集中プログラムを抜きに語ることはできません。緘黙児にとって安全な環境の模擬教室を作り、 スケジュールも学校に似せて、そこで発話を促す、グループ形式の行動療法プログラムです。夏休みなどに5日間(あるいは1日)、10名ほどの緘黙児を集めて行ないます。合わせて、親向けの講習会も行ないます。

集中プログラムは、ニューヨークの Child Mind Institute による Brave Buddies で始まりました。

↓ Child Mind Institute へのリンクです。
◇ Brave Buddies Program (新しいウィンドウで開く

このプログラムは近年、アメリカで広がりを見せています。私が確認しただけでも、Brave Buddies に影響された集中プログラムがこれだけ行なわれてきました(順不同)。

○ Selective Mutism Adventure Camp(オークブルック)
○ Boston University Brave Buddies Camp(ボストン)
○ Confident Kids Camp(アナーバー)
○ Camp Courage(ニューヨーク)
○ Mighty Mouth Kids(ニューヨーク)
○ Brave Bunch(フロリダ)
○ Resilience Camp(レイトン)

近年のアメリカの専門的な本では、集中プログラムの解説が載るようになってきています(Kotrba, 2015; Mac, 2015)。また、ABC News や The New York TimesThe Wall Street Journal など、メディアでも取り上げられています(記事末尾「関連記事・関連リンク」をご覧ください)。近年のアメリカではこのように緘黙児への集中プログラムが大きな潮流です。もっとも、この集中プログラムの有効性がどれほど実証されているかは、私はよく知りません。

ただ、これらのプログラムは、低年齢の緘黙児を対象としたものでした。例えば、ニューヨークの Brave Buddies の場合、3歳から8歳までが対象です。

10~14歳向けプログラム WeSpeak が登場


そこで、より年齢が上の緘黙児を対象とした集中プログラムが最近登場しました。"WeSpeak" というもので、対象年齢は10歳から14歳までです。7月24日から28日までの5日間と、12月26日から29日までの4日間、行なわれます。このプログラムを開発した人物は、緘黙児への集中プログラムを開発した Steven Kurtz 博士です。

↓ WeSpeak の説明ページ。Steven Kurtz 博士が創設した Kurtz Psychology Consulting PC へのリンク。
◇ WeSpeak | Kurtz Psychology Consulting PC (新しいウィンドウで開く

私はつい先日この WeSpeak を知ったばかりなのですが、これがいつから行なわれていたものかは、はっきり分かりません。予備的な実施などを別とすればおそらく今回が初めてか、そうでなければ比較的最近始まったのではないかと思います。ウェブサイトのアーカイブ閲覧サービス Wayback Machine によると、2016年6月時点では、先ほどの WeSpeak の紹介ページはありませんでした。2017年4月には、サンフランシスコで行なわれた Anxiety and Depression Conference という会議で、このプログラムをテーマとしたワークショップが開かれています。

↓ そのワークショップの概要。
◇ WeSpeak: A Novel Treatment to Address the Under-Addressed Needs of Older Kids With Selective Mutism (新しいウィンドウで開く

低年齢の子ども向けの集中プログラムとの具体的な違いはよく分からないのですが、上のワークショップのページでは、「年齢が上の子どものより高度な発達、認知、社交スキルに適応したものである」(is adapted to the more advanced development, cognition, and social skills of older children)と書かれてあります。

さらなる発展を遂げる集中プログラム


より上の年齢層のプログラムが開発されたことから、緘黙児への集中プログラムはさらなる発展を遂げたと言えます。集中プログラムの当否は専門家ではない私には判断できませんが、アメリカの緘黙支援では大きな潮流であり、注目すべきだろうと思います。

余談・別の集中プログラム


なお、アメリカの緘黙支援では Steven Kurtz 博士らのグループと双璧をなす(と私が見ている)緘黙・不安・関連障害治療センター SMart Center が、これとは別の集中プログラム CommuniCamp を始めています。その宣伝のしようから、なかなか力を入れているものと見られます。

↓ SMart Center ホームページへのリンク。
◇ CommuniCamp – Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center | SMart Center (新しいウィンドウで開く

こちらの集中プログラムは、Social Communication Anxiety Treatment (S-CAT:かんもくネット資料で「社会的コミュニケーション不安治療」と訳されているもの)という SMart Center 独自の考え方に基づいているようです。ですが、グループ形式で行なったり、親向けの講習会を行なったりと、Steven Kurtz 博士らのグループによる集中プログラムと共通点もいくつかあります。

Steven Kurtz 博士らの集中プログラムと、CommuniCamp の関係はよく分からないのですが、どちらにしろ、アメリカの緘黙支援では「集中」(intensive)が近年の重要なキーワードのようです。

[追記(2017年7月4日)]

余談の箇所で、一部内容を削除しました。





「かんもくアコースティックライブ」7月1日先行予約開始

2017年07月01日(土曜日)

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10月22日(日曜日)に行なわれる予定の「かんもくアコースティックライブ2017」ですが、先行予約の開始日となりました。そこで、ここで改めてお伝えします。

「かんもくアコースティックライブ2017」は6月24日に公式サイトが公開され、その詳しい内容が明らかになりました。

◇ かんもくアコースティックライブ公式サイト - かんもくアコースティックライブ2017
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この公式サイトでは、先行予約も受け付けます。7月1日午前10時より、まずは当事者・経験者・保護者の方の先行予約受付がスタートします。詳しくは、公式サイトをご覧ください。

昨年は7月31日にライブの情報が公式サイト開設とともに公開、同日に予約が開始され、8月20日に定員に達したそうです。定員は40名でした(対象:当事者・経験者・保護者)。ライブは4ヶ月先ですが、ライブに行かれる方は、お早めに予約するに越したことはないかもしれません。

今回は、緘黙に理解・関心のある一般の方も受け付けています。これは昨年の第1回開催の時から、企画者の manana さんが将来そうしたいとおっしゃっていたと思います。計画通り進んでいることが窺われますし、計画通り進んでいるということは、第1回のライブがきっと成功したのでしょう。

今年は、昨年以上に本格的な印象を受けます。定員は増え、会場も、昨年より収容人数が大きそうです。公式サイトは昨年以上に充実していますし、今年は Twitter や Facebook のアカウントまで開設されています。今年のライブの展開が楽しみです。